宗教別の葬儀マナー
仏式の作法
葬儀や告別式は故人の信仰していた宗教に従って執り行われるのが普通です。
仏式、神式、キリスト教式など多岐に分かれます。
まずは、日本で最も一般的な仏式を取り上げてみましょう。
合掌の仕方
合掌は、仏前に両方の手のひらを合わせ、目を閉じて静かに礼拝する基本的な作法です。
背筋をまっすぐに伸ばし、胸のあたりで両手を合わせます。
指先はすき間をつくらず伸ばし、脇の下はゆるく空けます。
そして、そのままの姿勢で頭を垂れます。
この合掌という礼法は、古くからインドに伝わるものです。
左手は煩悩の世界を、右手は悟りの世界を象徴し、両手を合わせることで、
仏への帰依を祈願するものとされています。
数珠の扱い方
- 合掌の際は、親指以外の指を通して手を合わせる
- 持ち歩く際は 左手にはさむか左手首にかける
焼香の作法
仏式では通夜や葬儀の際、焼香を行います。
焼香の香りは、仏に捧げる食事に相当するものといわれ、仏に対する敬虔な気持ちを表明する行為です。
焼香には線香を上げる「線香焼香」、抹香をたく「抹香焼香」、
香炉が順番に回ってくる「回し焼香」などがあります。
焼香は喪主、近親者、一般弔問客の順に行われ、一般弔問客は並んだ席順に焼香します。
自分の番が回ってきたら、祭壇の前へと進み出ます。
その際、左右の列席者に対して頭を下げる人を見かけたりします。
ていねいな感じはしますが、その必要はまったくありません。
焼香の作法は宗派によって異なりますが、自分の宗派がある場合にはその作法に従ってかまいません。
一般的には次のように行えばいいでしょう。
@焼香台の2、3歩手前に進み出たら、僧侶、遺族に一礼し、
故人の遺影を仰ぎ見てから祭壇にも一礼し、合掌する。
※焼香は仏あるいは故人への礼拝を目的にした行為なので、
遺族と僧侶に対しては目礼だけでかまわない。
A焼香台の前まで進むと、焼香台には、右に抹香を入れた香合、左に火種が入った香炉が
置かれているので、右手で香を軽くつまみ、押しいただいてから香炉の中央に落とす。
B信仰かある場合には、念仏、あるいは題目をロ中で唱える。
C再ひ合掌しなから、2、3歩後ずさりして祭壇に一礼する。
ところで、香をたく回数には、1回、2回、3回の3通りがあります。
1回は仏への礼拝、2回は仏と衆生を表し、3回は欲望・怒り・暗愚の3つの煩悩を消すとも言われています。
ですが、一般的には特に決まりはありません。
ただし、参列者が多いときなどは1回にとどめるのがマナーとなります。
線香焼香
- 祭壇の前で正座して合掌
- 右手で線香を1本か3本取り、ロウソクの火をつける
- 線香の炎を、もう一方の手で仰ぎ消す
- 線香を1本ずつ離して香炉に立てる。もう一度、心を込めて合掌し、一礼して下がる
抹香焼香
- 祭壇の前に進み、遺族、僧侶に一礼したあと遺影に一礼し、軽く合掌
- 右手の親指、人差し指、中指で抹香をつまむ。頭を軽く下げ、香をつまんだまま目の高さまで
捧げる
- 香を香炉にくべる。これで1回。焼香の回数は宗派により異なり、1〜3回だが、自分の作法で
行えばよい
- 遺影に向かって合掌し、故人の冥福を祈る。数歩下がり、遺族と僧侶に一礼して自席に戻るか退席
回し焼香
- 盆にのった香炉と香合が回ってきたら、正面に置き、次の人に「お先に」と会釈してから合掌
- 抹香を右手の親指、人差し指、中指でつまみ、目の高さに捧げてから香炉に落とす
- 祭壇の遺影に向かって合掌
- 終了後、両手で次の人に香炉の盆を回す
神式の作法
神式では、仏式の通夜にあたる儀式を通夜祭と呼びます。
儀式の前には、手や口を水で清める手水の儀を行います。
右手で柄杓を持って水をくみ、左手に3回かけ、柄杓を左手に持ちかえて、右手に3回かけます。
さらに再び右手に持ち替えて、左手に水を受けてから口をすすぎ、最後に左手にかけます。
また、仏式の焼香に代わる儀式として玉串奉奠を行います。
玉串を供えたら、二礼二拍手一礼してから下がります。
拍手は、両手が合う寸前に止めて音を立てない偲び手で行います。
玉串奉奠の仕方
- 神官から玉串を受け取る。葉先を左手で下から受け、根元を右手で上からつかむ
- 玉串台(玉串案)の前で、玉串を右に90度回転させる
- 右手と左手を持ちかえて、玉串を右に180度回転させる
- 玉串を捧げる。二礼二拍手一礼し(拍手は音を立てない)、前向きのまま下がる
※玉串は榊の枝に四手という紙片をつけたもので、お盆の代わりとみなし、
自分の真心をのせて捧げるという意味がある
キリスト教式の作法
キリスト教に通夜はありませんが、日本の風習に合わせて、カトリックでは通夜式、
プロテスタントでは前夜祭と呼ばれる儀式を行います。
また、欧米では土葬する際に棺に献花をしますが、日本では仏式の焼香の代わりに献花を行います。
カーネーション、菊、百合など茎が長くて白い生花を、献花台に順番に供えていきます。
また、仏式の読経や神式の祭詞の代わりに、聖書の朗読や聖歌・賛美歌の合唱が行われます。
聖歌や賛美歌を知らなければ、静かに拝聴します。
献花の仕方
- 花側を右手で下から受け、根元側を左手で上からつかむ
- 献花台の前で右に90度回転させ、献花台に捧げる
- 遺影に黙祷して、遺族と神父(牧師)に一礼する